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督促手続・少額訴訟とは
督促手続の概要
督促手続とは,債権者からの申立てに基づいて,原則として,債務者の住所のある地域の簡易裁判所の裁判所書記官が,債務者に対して金銭等の支払を命じる制度です(民事訴訟法第382条以下)。
この督促手続制度の特徴としては,
ア 裁判所書記官は,債務者の言い分を聞かないで金銭等の支払を命じる「支払督促」を発することとされています(同法第386条第1項)。 イ
債務者は,支払督促又は仮執行宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間以内に,その支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に「督促異議の申立て」をすることができます(同法第386条第2項,第391条第1項)。 仮執行宣言を付した支払督促について督促異議の申立てがない場合には,その支払督促は,確定判決と同一の効力を有するものとされます(同法第396条)。債権者は,「仮執行の宣言が付された支払督促」又は「確定判決と同一の効力を有するものとされた支払督促」に基づいて強制執行の申立てをすることができます。
ウ
ただし,債務者が所定の期間内に「督促異議の申立て」をすると,通常の訴訟手続に移行し,その手続の中で,裁判官が改めて債権者の請求が認められるかどうかを審理することになります(同法第395条)。
少額訴訟の概要
少額訴訟手続とは,60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用できる,簡易裁判所における特別の訴訟手続です(民事訴訟法第368条第1項)。 この制度は,簡易迅速に紛争を処理することを目的として設けられた制度ですので,通常の訴訟手続とは異なる点があります。例えば,
ア 裁判所は,原則として,1回の期日で審理を終えて,即日,判決をします(同法第370条第1項,第374条第1項), イ
訴えられた人(被告)は,最初の期日で自分の言い分を主張するまでの間,少額訴訟手続ではなく,通常の訴訟手続で審理するよう,裁判所に求めることができます(同法第373条第1項)。
ウ
少額訴訟手続によって裁判所がした判決に対して不服がある人は,判決又は判決の調書の送達を受けてから2週間以内に,裁判所に対して「異議」を申し立てることができます(同法第378条第1項)。この「異議」があったときは,裁判所は,通常の訴訟手続によって,引き続き原告の請求について審理を行い,判決をしますが(同法第379条第1項),この判決に対しては控訴(この場合は地方裁判所に対する不服申立て)をすることができません(同法第377条)。
※
注意点 少額訴訟手続においても,通常の訴訟手続においても当てはまることですが,ア.被告が最初の口頭弁論期日に出頭せず,かつ,イ.訴えた人(原告)の主張を争う内容の書面も提出しない場合には,被告は,原告の言い分を認めたものとみなされ(同法第159条第3項本文,第1項-擬制自白の制度といいます。),裁判所は,原告の言い分どおりの判決をすることができます。
督促異議の申立て・不服申立てをした後の手続
「督促異議の申立て」をした後の手続
1最初に送達された「支払督促」又はその後に送達された「仮執行の宣言を付した支払督促」に対して,送達を受けた日から2週間以内に「督促異議の申立て」をした場合,手続は,通常の訴訟手続に移行します。 したがって,その後は,債権者が原告,債務者が被告となって訴訟手続が進行し,裁判官によって,どちらの言い分が正しいか審理・判断がされます。裁判所からは,審理の期日の「呼出状」が送られてきますので,期日に裁判所に出頭し,それぞれ自分の言い分を主張することになります。
2 この訴訟においては,「支払督促」を申し立てた債権者(原告)は,その「支払督促」に記載された事実(金銭の支払を求めることができる根拠となる事実)を主張し,これを裏付ける証拠(契約書など)を提出しなければなりません。そして,この証拠が十分でなければ,原告の請求は認められません。したがって,架空請求であれば,原告は,証拠を提出することができず,その請求は認められないという判断がされることになります。 ただし,債務者(被告)において「督促異議申立書」に何ら反論を記載せず,かつ,最初の期日に出頭しないときは,債権者(原告)の主張を認めたものとみなされ,裁判所は,債権者(原告)の主張どおりの判決をすることができることになるので注意が必要です。
「支払督促」において,債務者とされた者が強制執行を免れる方法
1 最初の「支払督促」の送達を受けた段階
→ 債務者は,その「支払督促」の送達を受けた日から2週間以内に「督促異議の申立て」をする必要があります。この申立てをすれば,「支払督促」は直ちに失効しますので,その「支払督促」に基づいて強制執行を受けるおそれはありません。
2 「仮執行の宣言を付した支払督促」の送達を受けた段階 上記1の段階で「督促異議の申立て」をしないと,債権者の申立てにより「仮執行の宣言を付した支払督促」が発せられることになります。この「仮執行の宣言を付した支払督促」に基づいて強制執行をされるおそれがあります。
→ 債務者は,「仮執行の宣言を付した支払督促」の送達を受けた日から2週間以内に「督促異議の申立て」をするとともに,「強制執行停止の申立て」をする必要があります。
3 「支払督促」が確定した段階 上記2の「仮執行の宣言を付した支払督促」の送達を受けながら,「督促異議の申立て」をすることなく2週間を経過すると,「支払督促」は確定します。この確定した「支払督促」に基づいて強制執行をされるおそれがあります。
→ 債務者は,「請求異議の訴え」(民事執行法第35条第1項)を提起するとともに,「強制執行停止の申立て」をする必要があります。
少額訴訟における不服申立ての方法
1 少額訴訟においては,まず,訴えられた人(被告)は,最初の期日で自分の言い分を主張するまでの間に,少額訴訟手続ではなく通常の訴訟手続で審理するよう裁判所に求めることができます(同法第373条第1項)。 被告において少額訴訟の手続で審理をすることに異存がなければ,少額訴訟の手続で審理され,判決がされることになります。そして,この判決に対して不服がある場合には,
a 判決又は判決の調書の送達を受けた日から2週間以内にその判決をした簡易裁判所に対して「異議」を申し立てることができます。
b 上記「異議」を申し立てた場合には,裁判所は,通常の訴訟手続によって,引き続き原告の請求について審理を行い,判決をします。
c ただし,この改めてされた判決に対しては,「控訴」(上級の裁判所-この場合には地方裁判所-に対する不服申立て)をすることができません。
2 なお,通常の訴訟手続においても,当事者の主張・立証に基づいて裁判所(裁判官)が判断することという枠組は少額訴訟手続と同じです。ただし,原則として1回の審理で判決を出すといった特則はありません。そして,判決について不服がある場合には,判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴することができ,上級の裁判所で再度,審理を求めることができます。
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